東大駒場寮物語

松本博文 著 角川書店 2015年

1993年に東大に入学した著者は廃寮問題のさなかにあった駒場寮にはいった。この本ではその頃の駒場寮の生活とともに歴史を振り返っている。…というと趣旨はこのサイトとほとんど同じではないか。
違うところと言えば、地方国立大学ではなくてそこが東京大学の寮であること。遡れば一高の向ヶ丘寮までいくんだもの。

 この本から想像する当時(90年代の)寮の雰囲気は北溟寮などよりずっとリベラルで、すべからくゆるやかな環境だったと思われる。全国大学の寮に共通するところはあるものの、駒場寮はやはり特殊な寮である。

 さすがに東大だけに駒場寮に関係した過去の人は、学者、経営者、政治家、作家、ミュージシャン、文化人と有名人オンパレードで多くの文献やブログなどに駒場寮のことを書いている。作者は精力的にそれらを渉猟し豊富なエピソードとなって本書に結実している。

 マルヒの母方の叔父は60年代、東大闘争が燃えさかった時期に駒場寮にいた。彼は東大経済学部生で第二次ブント・共産同マル戦派というセクトに属し駒場寮を根城にしていたのだ。政治の季節の駒場寮の話はこの本ではすっぽり抜けているのが残念なところ。

 駒場寮でも《電話・お電話・おお電話》(参照『第二十三夜 電話』)があったという話がおもしろい、どこから広まった風習でどこまで広がったんだろうか。

 21世紀をむかえて、駒場寮は廃寮となった。寮に残されたいた記録は都内の一軒家に保存されているという。それがまた悲しくもうらやましい。
《2020/9/11》

おすすめ度 ★★★★☆ 星4個

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