81年北溟祭 階対抗演劇大会 1階作品
『ねらわれた学園』
『第二十一夜 階対抗演劇大会』参照のこと
■脚本・演出 メグロ
■制作 マルヒ
■出演 闘う三本木闘争委員会…ミヨシ 民主平民同盟…トンショ キリスト教…カメダ 学生…サクライ
ミヨシ*注1)ヘルメット姿、タオルで覆面、手にはビラ『闘う三本木では今、空港廃止運動をやっております。三本木の農民は私たちと一緒に決起しています。ミッドウェー入港阻止、核持ち込み糾弾、日本帝国主義打倒、われわれと一緒に闘いましょう』
トンショ*注2)ゼッケン、肩から画板を前に吊しかけ、その上に署名用紙『明るくいきがいのある社会、僕たち民主平民同盟は夢のある学園生活、希望のある社会を目指しています。みんなで楽しい署名をし、集会を成功させましょう、署名をお願いします、署名をお願いします』
人が2,3人通り過ぎる。ある者はもらう、ある者は署名する。通り過ぎようとする者もある。
通り過ぎる人に
カメダ*注3)学生服を後ろ前に着る、手に聖書『そこの人、今忙しいですか?私に三分間時間くれませんか?お友達になりましょう。』
相手にされない
カメダ『そこの人……』
全員通り過ぎるまで繰り返す。
ミヨシ『このビラを読んでもらえば皆分かってくれるに違いない。革命は革命なんだ』
トンショ『夢のある学園生活、希望のある社会、きっとこの署名で実現してみせる。あ~、だけど今日は署名する人が少ないなー。あと一息頑張るぞ』
カメダ『私とお友達になりませんか?キリスト最高。おー、今日の通行人は皆仏教徒か?みんなつれない。みんなつめたい。だけど私頑張るね。この次、ここを通る奴必ずつかまえて見せるよ』
サクライ*注4)手に何かの雑誌 カジュアルウェア登場
ミヨシ『こちら闘う三本木闘争委員会です。ビラをどうぞ』
トンショ『夢のある学園生活、希望のある社会、署名お願いします、署名お願いします』
サクライ通り過ぎようとする
ミヨシ『ちょっと君、我々のビラをなぜ受け取らないんだ』
テンポ速く↓
サクライ『え?お宅なんですか?』
ミヨシ『闘う三本木闘争委員会です』
トンショ『生きがいのある青春、民平同盟です』
ゆっくりと
カメダ『私とお友達になりませんか、三分間…』
ミヨシ、カメダをさえぎって
ミヨシ『…さあ、このビラを受け取りぜひ呼んでくれたまえ』
サクライ『別にビラ一枚もらったってどうなるもんじゃないからもらいますよ』
ビラを手に取ろうとする
トンショ『ちょっと待った、君!灰色の青春を送っているんじゃないのかな?明るい社会、夢のある学園生活、その為に、さあ、みんなで署名しよう。みんなで集会開こう、さあ』
強引に署名ビラを渡す
サクライ『署名ですか?…どれどれ』
ビラを見て
サクライ『これは何に対する署名ですか?』
トンショ『エッ?』
トンショ絶句する
サクライ『どこにだす署名ですか?』
トンショ『どこに出すって、あなた、どこにも出しませんよ』
サクライ『え~?どこにもださないの?じゃ、なんの為に署名するの?』
トンショ『何のためって、ただの署名です。夢のある学園生活、希望のある社会のため、さああなたも署名して集会に参加しましょう。hand in handです』
サクライ『だって意味もないのに署名なんて』
トンショ『あ~、暗い。根が暗い、真っ暗だ。あなた、あなたでしょう、生まれてすぐ幼児教育を受けて、小学生から塾通い、有名私立にもぐりこみ、高校ときたら男子校、やっと大学来てみれば頭に浮かぶのは就職のことばかれ。署名なんて理屈じゃないんだ』
トンショひとり芝居
トンショ『「署名してください」 「はい、署名します」 これこそ夢のある学園生活、希望ある社会の実現なんだ』
サクライ『…』(絶句)
ミヨシ『そこの学友諸君!ノータリン民平などかまわずに、さあ、このビラ…この私たちの血と汗と涙のしみついたこのビラを読んでくれたまえ』
サクライ受け取りビラを読む
サクライ『あれ?…みなさん学生運動の人たちですか?』
ミヨシ胸をはって
ミヨシ『まいどおなじみの闘う三本木闘争委員会です』
サクライ『エーッ あの学生運動、あの60年安保闘争、67年砂川闘争、羽田闘争、68年佐世保闘争、70年全共闘運動そして、よど号、浅間山荘と続いてきたあの輝かしい学生運動ですか?まだまだ活動していらしたんですか?』(…感動して…)『キセキだ、生きたカセキだ、シーラカンスだ』
ミヨシ、独特の口調で
ミヨシ『なにをいっとるのか 我々はぁ、いまぁ、圧倒的にぃ、闘い抜いてぇ、いるのだ』
サクライ『いやーすごいんだなあー。皆がんばっていてくれたんだなあ。なんか嬉しくなっちゃうなー。学生にそっぽ向かれ、時代に押し流され、それでも頑張っている。いつか…、いつかですね。いつか、あの革命を…いいフレーズですね』
ミヨシ『我々の同志は今日も三本木で農民とともに闘い、過去の闘争で不当にも逮捕され、未だに獄中につながれている者もいるんだ。さあこのビラを読み、三本木に圧倒的に決起するんだ』
サクライ『にくい、お兄さんにくい!目に憂いがある。くちびるに悲しみをたたえている。背中に陰がある、挫折を知ってる男たち。よっ!若大将』
ミヨシ『いい加減にしろ!おこるぞ!』
サクライ『おー、怖い。ゲバルトですか。ゲバ棒ポカリ、まさか私、明日お城のお堀にぽっかり浮かんでいるなんてことないでしょうね。そんなpolicyのない殺人しませんよね。それじゃ通り魔殺人と同じだ…。やっぱり金ゾクバットじゃなくてゲバ棒でなきゃってとこ、今の受験生に見せてやんなきゃ』
トンショ『君!』
トンショ、サクライの肩を抱く
トンショ『こんな非民主的な奴らと話をしないで、さあ、ボクたちと楽しく夢を語り合いましょう。署名しましょう、集会開きましょう』
ミヨシ『うるさい、この留年集団めが。手前らみたいにその辺のブス集めて歌、歌ってるようじゃ留年して当然だ』
トンショ『何を言うんだ、僕らは明るい陽の下で頑張っているんだ。あんたらみたいにヘルメットかぶって顔隠して…本当は悪いことしてると思ってるんだろ』
サクライ『いいぞ民平、そこだ三本木』
カメダ『争いは醜い。皆愛すればいいのです。皆さん、いま忙しいですか?私に三分間時間をください。私とお友だちになりましょう。』
サクライ『おっと、お宅は *注5)2字空白かなあ千石イエスの弟子かなー。もうかるんだってね、新興宗教は』
カメダ『ノー、何をいうか、私はキリスト教徒、キリストの愛こそ素晴らしい。迷える子羊とはあなた方のことです。神の御心のまま、生きることにしなさい』
ミヨシ『我々の思うに神の愛で、虐げられた労働者人民を救えるはずはないのである。今こそ決起せよ!革命だ!』
トンショ『神の愛より人間の愛。さあ、みんなで手をとりあって、署名しよう、集会開こう、hand in hand だ』
サクライ『いいなあ、みんないい!挫折に耐えそれでも闘っている三本木の皆さん、明るい社会夢のある学園生活、そんな非現実的なものをそれと知りながらしがみついている民平同盟のあなた、そして見えもしない神を見えた、と自分を自分でだましちゃう神父さん…。いいなあ…好きだなあ…みんないい人なんだなぁ…うん、分かった。ビラもらっちゃう、分かった、何も言わずに署名しちゃう、うん、分かってるって、忘れてない、お友だちになっちゃう。みんなで幸せになろうね』
ミヨシ『なんて奴なんだ!!あいつにはpolicyがあるのか?この現実が見えないのか?』
トンショ『ひどい奴だ!この人にはなにも見えていない。こいつは犬以下だ。ヤマムロ*注6)メグロの同期。なぜか犬のようだといわれていたと同じだ』
カメダ『Oh NO! キリストは初めて人を見放す時が来た。この者には救いはない!』
サクライ『どうしたの皆さん?みんな一列に並んで!いっぺんにはできないよ、さあ初めは誰かな?三本木さん、民平さん、キリストさん…さあさあ』
ミヨシ『我々の血と汗と涙のビラを、お前みたいな奴に渡せるか…去れ、体制の犬め!』
サクライ『そんなに言わなくていいじゃないかー。起きっこない革命をうそぶくだけのきさまらのどこが偉いんだ?三本木で農民と一緒にイモ掘ってそれでどうなるんだ?お前らの新聞にまた誇張しきった記事をのっけて喜ぼうって魂胆だろ?そんなの自己満足だ』
カメダ『Oh Yes! 共産主義は悪魔のつかいです。あなた方はただの人殺し集団です。神は決してあなた方を許さないでしょう』
トンショ『そうだ、そうだ。ニセ左翼暴力集団だ、三本木でイモ掘ってる援農集団め。意味のない革命より、生きがいのある青春。みんなで手を取り合って、楽しい署名、そして集会を成功せせよう』
サクライ『あんたらは偉い。俺は民平の署名、しちゃうぞ。明るい明日信じます。夢のある学園生活期待します。集会参加します。早くペンをください!』
トンショ『あんた程のバカはいくら僕たちでも仲間に呼べません!あんたの名前なんて書かれるとこの署名用紙が汚れるわい』
サクライ『ホー、俺が民平にも入れない?下らない連中がブスだまくらかしてつくった集団のくせに。集会の時だけ頭数揃えやがって。オメーラ花見に行くときもガクラン着ていくんだろ、女子寮のソバに住んでるたってイバルナ!*注7)北鷹寮(学園町路線)を意識したセリフ。『第七夜 隣人』参照』
ミヨシ『そうだそうだ、明るくするにはおまえらより電気のほうがよっぽといいわい』
カメダ『…七夕祭*注8)学園町の寮祭。朋寮・北鷹寮の共催より溟寮祭デース!人間の愛より神の愛だ』
サクライ『こら、そうゆう新興宗教野郎、おまえも俺を軽べつしてるんだろ』
カメダ『キリスト教は狭き門。残念ながらあなたには似合わない。私お友達いらない』
サクライ『てめぇら、なんだよ。ケッなにがキリストだ。ミッションスクールの女どもは西弘*注9)弘南鉄道西弘前駅(現・弘前学院大学前)近辺。弘前学院大は当時女子大であったの飲み屋に毎夜出没しているではないか。何が民平ドーメーだ。頭ノータリンのくせにかっこばっかりつけやがって。なんとなくクリスタルっておまえらのことか? 何が三本木だ、カンパ求めてタクシーなんかに乗りやがって、てめえら、みんなカスだ!!』
トンショ『頭ノータリンってどうゆうこったよ!なんで俺たちがそんなこと言われなきゃならないんだ?』
ミヨシ『我々も革命的にそう思うぞ』
カメダ『Oh Yes わたしもそう思います』
サクライ『おっ、きさまら連合してきやがったな?それじゃ何かね、俺は神の御心のままに、明るく楽しく、革命的に決起しちゃうぞ!』
ミヨシ『あ~もういやだ。80年代の学生はもうどうなってるんだ。やっぱり我ら学生運動は終わっちまったんだろうか
トンショ『ばかやろう、なにいってんだよ』
ミヨシ『夢だったんだよ、夢』
トンショ『だめ!今、降りちゃ…』
二人でしゅんとなって、ビールを飲もうとして脇に置く*注10)ここのくだり、当時流行っていたあさひアサヒビール『ミニ樽』のCMのパロディ。なので脇に置くのはミニ樽
カメダ『神にも一杯のブドウ酒、私もビールでのどをうるおす』
ビールを飲む
サクライ『このキリスト野郎、人が真剣に悩んでいるときにビール飲むなんて』
カメダを平手でなぐる。カメダ、ハッとして
カメダ『私には見えた。ついに見えた、今キリスト様の姿がハッキリと…』
続けて
カメダ『主は右の頬を殴られたら左の頬を投げ出せと言っております。さあ、もう一度殴りなさい。私は間違っていなかった、私は神の愛だ!』
客席にむかって
カメダ『皆さん、三分間時間ありますか?私と友達になりましょう!!』
サクライ『お、俺にはできない、あんな愛がない。おい、革命野郎、きさまはどうだ』
ミヨシ『うーーー』
悩む。ハッとして
ミヨシ『我々はこの日本帝国主義を必ず打倒する。この体制を粉砕して圧倒的に三本木に集結しつつ闘うぞ。我々は日夜、理論武装と体力増強を忘れてはいない』
サクライ『うっ俺にはあんな情熱もない。そこの歌って踊ってクリスタル野郎、お前はどうなんだ!』
トンショ『うーーー』
ハッとして
トンショ『明るく楽しくすべて良し。夢ある学園生活、希望ある社会みんなで楽しい署名をし、集会を成功せさよう』
サクライ『うーー。俺は三人を批判してきた。奴らはくさってる奴らだと思っていた。だけど俺はいったい何なんだ、どう生きるんだ』
ハッとして
サクライ『俺は俺だ。俺は俺として生きるしかない。キリストも革命も青春もみんな俺とどこか違う、そうだ…』
カメダ『三分間時間ください、お友達になりましょう』
ミヨシ『革命だ、我々は闘うぞ!』
トンショ『楽しい署名をしよう、集会を開こう』
サクライ『君たち、、ありがとう』
サクライ客席にむかって指さす
サクライ『ところで君たちは、今、生きてますか?』
――幕――
◆作品中一部不適切な表現がありますが時代背景を考慮するとともにオリジナリティを尊重しそのまま掲載いたします。